橘・フクシマ・咲江氏

G&S Global Advisors Inc.代表取締役社長で、九州電力の社外取締役の、橘・フクシマ・咲江様にお話を伺いました。宜しくお願いします。

橘・フクシマ・咲江氏
G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長
元米国コーン・フェリー・インターナショナル株式会社取締役兼 日本支社代表取締役会長。2011年4月より経済同友会副代表幹事(〜2015年4月)、花王・ソニー・三菱商事などの社外取締役を歴任し、現在はウシオ電機(2016年〜)コニカミノルタ(2019年〜)そして九州電力(2020年〜)の社外取締役。日本取締役協会副会長。人財・キャリア開発に関する執筆・講演多数。

私は1995年からアメリカの公開会社の唯一の女性社内取締役に就任し、2000年に日本支社代表取締役社長となりました。その経験から2002年以降花王、ソニー等日本企業12社の社外取締役を務める機会をいただきました。当時はまだ社外取締役自体も、女性はさらに珍しかった時代で、その後12社の殆どで「初の女性取締役」として貴重な経験をしました。そして2020年から九州電力も関わらせていただいています。その間、社外取締役及び女性取締役の増加、CGコードの導入等、日本のコーポレート・ガバナンスの変化とともに歩んできました。2004年時点では、フォーチュン500社の日本企業27社で女性役員は日立の佐藤ギン子氏とソニーの私の2社のみでしたが、今は25社で35人くらいなので大企業ではダイバーシティも少しずつ進んでいると思います。

―西田:女性活躍とダイバーシティの関係、ステップはどのようにお考えでしょうか。

これまで何千人もの世界各国のエグゼクティブと仕事をした結論として、国籍や性別などはその人の個性の一部にしか過ぎないと考えています。日本取締役協会会長で元オリックスの宮内会長が「日本のコーポレート・ガバナンスは“遅々として”進んでいる」と表現されますが、ダイバーシティ推進にも当てはまり、ゆっくりとしかし確実に進んでいます。推進に必要なのは、「人財」を「女性」等のカテゴリのみで考えないことです。例えばAさんは女性で、弁護士で、母親で、海外勤務の経験もある等、多様な経験やスキルも含め全部トータルでAさんです。しかし、日本はあまりにも女性の登用が遅れているので、しばらくは時限的に女性支援等「カテゴリ」での支援が不可欠です。ダイバーシティ促進の際には、男女の話は一番分かりやすいので、そこから始めることは間違いではないですが、そこだけに留まらず、外国籍人財なども「外国人」というカテゴリではなく、「外国籍」もその「人財」の一つの個性と見ることが大切だと思います。LGBTQのように、性別もすでに男女で分けられない時代ですしね。

―西田:男性が自分自身の多様性に気づくと理解しやすいのかなと思います。

以前、アメリカの大企業のCEO調査をしたところ、女性の登用が進んでいる企業のCEOは、ご自分のパートナーやお嬢さんが職場で苦労するのを見て「彼女達はこんなに優秀なのに登用しないのはおかしい」と、自社では積極的に女性を登用しているCEOが多いとの結果がでました。経済同友会のダイバーシティ促進の委員会では、女性及び外国籍人財の登用も検討し、「経営者自らが自社の女性役員や管理職登用目標にコミットする行動宣言」をしたり、アンケートで自社の状況把握や、好事例を共有したりもしました。また、ジュニア・リーダーシップ・プログラムでは女性と男性を7:3の参加者にし、男性にマイノリティの経験をしてもらいました。男性参加者からは、他社の優秀な女性役員や部長と接して「本当に目から鱗でした」「いかに女性が優秀かよく分かりました」「どう推進すべきか分りました。」という声が多かったです。男性に自分ごとと体験してもらう研修も増えると良いですね。西田さんも皆さんに実体験を進めてくださいね、それが一つのカタリストとしての役割だと思います。

-西田:ありがとうございます。女性の取締役だけではなく働き方の多様化など、九州の企業と働く人が、より豊かに価値を発揮できるようになれたらと思います。

取締役会構成も本来は「女性だから」登用するのではなく、企業の戦略に合致するスキル等の組み合わせですべきなので、「女性取締役」という言葉が早くなくなれば良いと思っています。また、日本企業の「グローバル人財」育成の必要性を30年間提唱してきて、ようやくここ10年で関心が高まりましたし、働き方に関しても、副業兼業を認める企業も出始め, 人財市場の多様化が、“遅々として進んでいる”と感じています。例えば、就労体系でも、アメリカでは専門領域を持ちフリーランスでプロジェクトベースで仕事をする人も増えています。日本でも労働人口の約24%が(広義の)フリーランスです。2016年に経済同友会の「雇用労働市場委員会」委員長の際に、「新しい働き方」の提案をしており、プロフェッショナルなスキルを持ち新しい働き方ができるような育成方法、人事制度・報酬形態、契約上の受け入れ組織側の柔軟性など、どちらもWin-Winとなれるようにと提案しています。6年経ち随分増えてきたと思います。そしてこれからは「デジタル+α(アルファ)」価値創造労働の時代ですね。

こうしたダイバーシティ(多様化)の流れは、経営者の皆さんもニュースや世の中の傾向を見て、気にされていると思います。その気づきが、数字やデータを見たり研修を受けたりすることによって、認識に変わり、ご自分の意識の中に定着をすると、組織や社会が変わると思います。九州はダイバーシティへの取組みが活発だと思いますので、これからもがんばってくださいね。

-西田:本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!