株式会社VIコンサルティング 郷田郁子さん

−こんにちは、宜しくお願いします。東京の会社員から結婚を機にIターン転職、その後起業され、且つ最近は別の組織の一員として参画する等、様々な働き方を経験され且つお子さんを4人育てていらっしゃる郷田さん。少しずつ時系列に伺えたらと思います。

郷田さん:結婚を機に夫の地元の北九州にIターンし、福岡市の経営コンサルティング企業に転職しました。入社4ヶ月後に妊娠しギリギリまで働き、出産後3ヶ月から復帰しました。当時は出産したら専業主婦やパートかまたは極端にバリバリ社長している人などのイメージしかなかったのが、正社員として第一線に復帰し働く女性がちょうど増え始めた時代でした。ブログなどでそういった情報を発信している人を見て、自分もやってみようと思いました。

−パートナー(ご主人)やご両親など、皆さんの反応はいかがでした?

郷田さん : 主人は「良いんじゃない」という感じでした。義理の両親は自営業で「仕事は大事よね」という感じでしたし、「東京から来た家事の出来ない嫁は仕事を頑張るらしい」と思ってくれたみたいで。一緒に保育園の下見に行って、復帰してからも予防接種や急なお迎えなど、様々な場面で助けてくれました。

−復帰後の仕事はどのような感じだったのですか?

郷田さん:コンサルタントのポジションのまま復帰したのでマミートラックに入ってやりがいがない等の悩みはなかったです。緊急対応が少ない案件の担当で10時~18時の時短勤務にしてもらい、終わらなければ徹夜して資料を作ったり、子供が入院しても隣でパソコン仕事したりしました。でも仕事は面白く成長実感もあったので、大変と思った事はないです。どちらかというと家事の方が負担で、夫が家事をしないことにイライラしました(笑)2人目までは仕事に穴をあまいと親も頼ってがんばりましたが、ある程度自分に自信や達成感が出てきたら「子どもにお熱がある時ぐらい一緒にいよう」と思う余裕が出来てきました。色んな場面で「子どもがいて休む時があっても、きちんと仕事をする人だ」と信頼貯金を積み上げたなと自分で思えたんじゃないかと感じています。

郷田 郁子(ごうだ ふみこ)
株式会社VIコンサルティング 代表取締役社長
東京大学法学部卒業。NTTデータ、監査法人系コンサルティング会社を経て現職。企業に勤めながら3人を産み、産休・育休・時短勤務を取りながら現場のコンサルタントとして事業計画策定、経営改善、金融機関対応などを行う。4人目の出産を機に、夫が経営する福祉・医療ソフトウェア開発・販売会社ヴィンテージに転職。ほぼ同時期にVIコンサルティングを起業し、女性活躍・女性起業支援・働き方改革などをテーマにコンサルティング・研修・講座企画運営などを行う。2018年にヴィンテージ取締役就任。

−そしてその後、起業されますよね。

郷田さん :4人目の妊娠が分かった頃と一番上の小学校入学が重なり退職しました。夫の会社が管理体制強化のタイミングで、その仕事をしようと思っていたのですが、起業した会社に補助金が出るタイミングだったので自分の会社を作りました。色んなご縁で北九州市男女共同参画センター・ムーブ様の女性起業塾に関わり、その後、女性活躍等のテーマで行政の事業を受託し始めました。ちょうど女性活躍が注目され始めた時期でタイミングが良かったと思います。

−今はご夫婦でそれぞれ会社を経営されているのですね。郷田さんは「ずっと社長をしていると視野が狭くなると思って」と仰いますが、具体的にどのような時にそう思われますか?

郷田さん :社長の器を会社が超えないとよく言われますよね。社長って上司も先輩もいないし、社員は否定的な意見を言いづらいと思います。私自身の情報を得る力や挑戦意欲が落ちてきたら組織が衰退すると思います。会社員だと「次はこの事業部に異動ね」とか「将来こういう役割を担って欲しいから、今ここで経験を積んでね」と会社が考え育ててくれますが、経営者だと自分で何とかするしかない。とりあえず今と同じことをやっていたら陳腐化して先細っていくだけなので、常に新しいことを仕掛けて挑戦することに慣れておかないと、と思っています。

−社会やニーズの変化で主力製品やサービスの売上が落ち、でも今のメンバーでどうしていいか分からず困っている企業も多いですよね。

郷田さん:既存商品やお客さまが続いていくならそれが一番いいですよね。新しいことは失敗するかもしれないし試行錯誤がいるし、初めはどうしても効率が悪いと思います。だけど社会の変化は激しいですし会社にも自分自身の能力にも、必要経費として投資し続けていきたいと思っています。

−久しぶりに某企業に半年弱、組織の一員として関わられたと思いますが、いかがでしたか?

郷田さん :最近は経営者や責任者ポジションが多かったので、背景や社風が違う会社で「中の人」として動くのは久しぶりで、新鮮でした。組織の一員としての視点・気持ちなどを感じることが出来たことも大きかったと思います。経営者の想いは社員に伝わりにくいとか、どんな良い上司でも本音を言う時は遠慮しちゃうとか(笑) またコンサルタント時代は会社に戻れば上司や同僚に相談できますが、今回は他社の中の人なので、そういう意味では本当に久しぶりの経験でした。だから改めて西田さんは、全然違う文化の会社、IT企業やドメスティックな組織、中小企業から大企業を行ったり来たりして、その辺りは転職の際どう合わせていくのですか?自分の気持ちのチューニングは難しくはないですか?

−広い意味で社会勉強の気持ちが強いですね。私は忙しくなく動いているように思われがちですが、根がのんびりなので、片方で週次でKPIを詰めつつ、他方で70代のシスター先生と教育についてじっくりお話ししていました(笑)。色んな世界線を跨いでいるのは私の特徴とは思っています。
郷田さんは4人のお子さんを育てつつ、最大限に効率を求めた時間の使い方をされて来たのだと思います。本当に凄いです。これまで仕事の熱量が落ちているなという時期はなかったのですか?

郷田さん : 今までは全然なかったのですが、年齢的なものもあるのかちょっと疲れたな~と思う時が出てきました。これまで「仕事のできる人になりたい」「今後のために経験値としてがんばろう」「仕事面白い!」とずっと思って。寝る前の読書も戦略などビジネス書を読んで、洗濯物を畳むときもビジネス系ニュースを見て・・・、といつも仕事視点でしてきたのですが「今後」っていつだろう、今何かできた方が多分人生豊かなのではと感じるときがあります。なかなかそこはモードが切り替わらないですね。最近経営者友達と話して、結局仕事が好きだから仕方ないねって(笑)

−経営者としての責任感からと思いますし、純粋にビジネス分野の興味関心がそもそも高いですよね、お話ししていていつも思います。ちなみに最近は行政の外部委員などに参画される機会も多いそうですね。

郷田さん:私の住んでいる北九州市では委員会の位置付けに応じ、外部委員の半数以上を女性にというルールができたそうです。やはり会議に女性が多い方が発言はしやすいですし、意見に多様性がうまれると思います。とはいえ、例えば発言順が年配の男性から順になりがちだとかこれは暗黙の了解なのかな?と思う場面があったり(笑) 多様性という観点では、本来誰が先陣切って発言しても良いと思いますが、なかなかまだ難しいところかもしれませんね。

−今はまだ、女性がとりあえず参画させていただいてます感もありますよね。従来の雰囲気にただ女性が巻き込まれるだけでは、インクルーシブではないなあと悩ましく思います。まだまだ専門職やビジネス分野は男性という印象が強いですが、郷田さんのような女性もどんどん増えてきていますし「MIMOSA+」の活動を通じ、色んな企業で女性のアドバイザーや顧問やプロフェッショナルが活躍できる道を増やしたいと思います。本日は色んなお話を本当にありがとうございました!
(インタビュアー:西田明紀)