九州電力株式会社

九州電力株式会社 代表取締役 藤井副社長にお話をお伺いしました。

西田― 大変ご無沙汰をしております。私が九州電力に在籍していた11年前にダイバーシティ推進の組織立上げに関わらせていただき、その当時の部長が藤井副社長でした。こうして再びお話をお伺いできますこと大変光栄です。本日は女性役員・社外取締役についてお話をお伺いさせてください。

藤井副社長― 久しぶりですね、宜しくお願いします。当社の女性役員・社外取締役についてですね。まず本来、ダイバーシティとは一人ひとりの個性に向き合い、その個性を最大限に伸ばして活かして活躍してもらうことが本質だと思っています。その点を踏まえたうえで、ダイバーシティの一つの要素である「女性の活躍」が脚光を浴びている状況において、コーポレートガバナンスコードで多様性について言及されていることや、機関投資家など社外からの観点もあり、当社としても女性で電力会社にはない広い知見をお持ちの方を是非社外取締役に迎えたいと考え、弁護士や会計士の方、学識経験者はもちろん経営者の方も含め幅広く候補者を考えていました。

西田― 2020年度から新たに、元経済同友会副代表でG&Sグローバル・アドバイザーズ株式会社代表取締役社長の橘・フクシマ・咲江さんが社外取締役として就任されていらっしゃいますね。

藤井副社長― 私は(公財)九州生産性本部の副会長を務めており、その講演会などにこれまでたくさんの素晴らしい講師をお招きし、講演をお聞きするとともに昼食会等で直接お話したり、著書を読んだりしていました。あるとき、講師として来福されたフクシマさんと昼食をご一緒し、また、講演をお聴きして、「このような方に社外取締役をお願いしたいな」と直感的かつ素直にそう思いました。もうその段階では「女性だから」という観点ではなく、「この方にお願いしたい」との思いから、お話しさせていただき、当社の社外取締役にご就任いただけることになりました。コロナ禍で福岡までお出でいただき会議に出席してもらうことが難しい状況が続いていますが、今は東京からWEB会議システムを利用してリモートで取締役会等に参加していただいており、国際的な幅広いご経験や我々電力会社にない多角的な視点から、ご意見・ご指摘をいただいています。こちらも非常に勉強になりますし、目から鱗のことも多く、本当にご就任いただいて良かったと実感しています。

西田― 今後、プロパー(社内)女性社員の役員登用の可能性はありますか。

藤井副社長― 当社は今、女性社員数は約1,000名で、社員全体に占める比率は約9%、管理職への登用も130名まで増えてきました。特に事務系職場では多くの女性管理職に活躍いただいています。今、部長やグループ長で頑張っている女性管理職の中から、これから執行役員になり、取締役にというのは当然あり得ると思っています。
 「私は女性だからどうせ役員にはなれない」と思わせてしまうような環境下では、その時点で無意識に能力発揮が限定されてしまい、結果として「やっぱり女性だから昇進できない」と言う負の連鎖に繋がりかねず、これは私の本意ではありません。設備・インフラ業界という男性が多い組織の中で、女性だということで処遇等に不利益が生じない環境を作るのは企業として当然です。当社の制度は充実してきていると思いますが、育児休職などを経た後も中長期でキャリア形成ができるよう更なる工夫が必要だと思っています。

西田― 業界特性や規模、組織内での理解がどの程度進んでいるかで取組みステップは大きく異なりますよね。個々人のキャリア形成や働き方の制度を整えることと、組織に多様性を持たせ新たな視点から力を発揮する視点を混同される企業も多いです。周りがやっているから何となく取組むではなく、自社の状況を知り社員の皆さんが納得する形で進められると良いですよね。

藤井副社長― まだ社会全体として経営トップや政治の場に女性が少ないのも事実で、政策的に推進する必要はあると思いますが、制度の整備だけにとらわれ過ぎると本質を見失い、個人の能力や感性を活かせなくなります。当社は女性活躍・ダイバーシティ推進を本格的に始めて10年以上になりますが、改めて女性の感性とはそもそも何なのか、例えば消費者視点を取込む必要はあるが、性別で分ける必要があるのかと考えたりもします。
 また、多様性を確保することは業績にも繋がることが実証されています。  画一的な組織は脆いので、性別に限らず、本当の意味でのダイバーシティの究極の目的をしっかりと見据えていく必要があります。それが人材マネジメントの真髄ですね。

西田― 取締役会の構成においてもダイバーシティ・多様性がますます注目されるのでしょうか。

藤井副社長― 取締役に相応しい人の定義は難しいです。これまでも弁護士、会計士、学識経験者など社内にはいない専門人材の方にもお願いしてきましたが、昨今ではDXやSDGs、カーボンニュートラルなどをコミットしないと、市場から評価してもらえない状況です。女性に限らず、どのような社外取締役をどう確保するのか、数だけ揃えれば良い時代ではないので、幅広く考える必要があります。今後、九州の女性にもそのような人材が増えると思っていますし、もちろん社内の女性社員がいずれ役員に就任することも期待しています。

西田― 藤井副社長、本日はお忙しい中、貴重なお話しありがとうございました。

九州電力株式会社
https://www.kyuden.co.jp/
設立年月日 : 昭和26年5月1日
本店所在地 : 福岡市中央区渡辺通二丁目1番82号
代表者       : 代表取締役会長 瓜生 道明
                   代表取締役 社長執行役員 池辺 和弘