株式会社ボナック

株式会社ボナックの取締役CFO三好今日子様にお話をお伺いしました。

株式会社ボナック  (https://www.bonac.com/)
◆創業:2010年2月
◆事業内容:独自核酸医薬の開発技術を基盤とした原薬製造、医薬開発
◆取締役会長:大木忠明(農学博士)
◆代表取締役社長:林宏剛
◆本社:福岡県久留米市合川町1488-4

―本日は宜しくお願いします。まずはボナックに入社された経緯を教えてください(インタビュアー:西田)

三好 今日子 氏
名古屋大学大学院医学系研究科にて修士号を取得。2008年に日興コーディアル証券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)に入社し未上場企業の法人営業部署に所属。その後、日興シティグループ証券株式会社等で引受審査業務を担当する。2012年に株式会社ボナック入社。社長室長、管理本部長を経て2014年に執行役員に就任。2016年に取締役に就任。

 私自身のキャリアパスとともにお話しできればと思います。もともと、薬の研究に興味があり、大学院まで進学しましたが、自分自身が研究者として社会に貢献できる将来像が描けませんでした。自分の興味があることを続けるよりも、社会に貢献できる仕事の中で、自分がやりたいことを見つけたいと思い、金融機関に入社しました。金融機関で企業の資金調達支援が出来れば、良いビジョン・技術等を持った企業の成長や社会に貢献にできると考えたからです。懐の深い会社・上司に恵まれ、入社直後から企業の資金調達にかかわる部署に配属され、様々なお客様の資金ニーズに合う資金調達の案件に関わることができました。資金調達に際して、企業の経営や財務状況、将来の計画を審査するという業務を行う中で、時間的な制約はありましたが、素晴らしいビジネス展開をされている会社を多数知ることができ、また、魅力的な経営者・経営幹部の皆様に色々とお話しができたことは私の財産だと思います。そのような業務を行っていく中で、長期的なビジョンをもって打ち込めることをしたいと思い始めたころ、ボナックの社長である林と出会いました。こんなにエネルギーがある人をそれまで見たことがなく、「この人と働いたら楽しいだろうな」という思いから、2012年にボナックに入社しました。
 社会人になってから自分自身が関わりたいな、挑戦したいな、と思える仕事と出会っています。うまく出来ているかは別として、私は「優秀な人々が能力を発揮するサポートをすること」に喜びを感じるのですが、ボナックでは自分が挑戦したいと思ったことをさせてもらえる機会が多く、本当にラッキーだと思っています。

―サイエンスバックグラウンドを持ちつつ、金融機関で経験を積みベンチャーへ転身。なかなかいらっしゃらないですよね。入社当時、組織はどのような状況だったのでしょうか。

 ボナックは2010年2月創業、私は2012年入社です。入社数ヶ月前に日本で特許の査定が下り、東京支店が開設したばかりでした。小さい組織でみんなができることに手を伸ばしながら進めていました。その後、私は2014年に執行役員、2016年から取締役を務めています。
 今回の西田さんとのお話の大きなテーマは、女性の活躍やダイバーシティ推進について、ですよね。ダイバーシティとインクルージョンというテーマについては意識することが多いものの、一方でジェンダーやセクシャリティは極めて個人的なことであり、他人が土足で踏み込んではいけないものという私自身の考えもあって、「女性が…」というようなことを論じることの難しさを感じています。誰かを性別のみで評価することや、性別を過剰に意識することはありません。性別ではなく、それぞれのキャリアの目標、能力、適性、個性をより理解していきたいと思っています。今日、西田さんとお話しするにあたり、チームメンバーに西田さんのインタビューがあると伝えたところ、「三好さんのチームは女性比率が多いですね」と言われて、「あら、そうだった?」という感じです。改めて調べたところ、私のチームは11名中女性が6名。会社全体に占める女性の割合が28%、役職者のうち女性が23%ですね。

―あまり意識されていないとのことですが、女性の活躍やダイバーシティ推進の動きについてどのようにお感じになりますか。

 本来、性別などが仕事で評価される対象になるべきではないですよね。もちろん、ハラスメントの対象になることは一切許容できません。
 入山章栄先生の著書に数多くの経営理論を網羅的・体系的にまとめられた書籍があります。その中で人の認知の届く範囲の限界と無意識下での取捨選択による意思決定への歪み等についての研究も紹介されていて、ダイバーシティ経営に関する実証研究の総論について学ぶことが出来るのですが、印象的だったのは、人の価値観、経験知見や能力などのについて多様な人材が集まるタスク型のダイバーシティは組織にプラスの影響を及ぼすとの研究についての記述でした。その人自身の内面にある特性に着目し、多様な人材を組織に擁することが大切なのではと思います。
 「ダイバーシティ推進=女性を昇進させること」となるのではなく、例えば自社サービスや生産性の向上に世代や性別、多様な視点の意見を取り入れることで、経営が良くなっていく成功体験の積み重ねを通じて、企業が多様性を包含することの本質的な利点を理解していくことがダイバーシティの推進に繋がると思います。価値観が多様化し、また次々に変化していく世の中なので、経営にどのようなことが必要なのかということを考え続けることが求められていますし、変化が激しい世の中だからこそ、長期的な視点で経営や組織の運営に向き合うことが重要だと思います。
 きっと西田さんは、上手くマネジメントできていない組織とせっかくの才能が生かしきれずに困っている方の両面を見ているので、上手くまわればという思いがあるのですね。

―そうですね、確かにたくさんの組織を比較して見ているので思うところはありますね。今後、組織と個人の関係はどうなっていくと思われますか。

 先ず、働き方について触れたいと思います。自分はどう働きたいか、今の働き方に納得しているのか、課題があれば会社、自分、家庭の事情など、それぞれ考えることが重要だと感じます。私自身、チームメンバーには、自分の人生にとって仕事とはどういう位置付けなのか、仕事をする上での目標は何なのか良く考えてね、と折に触れて伝えています。昇進を目指す、今のポジションで研鑽を重ねる、他の会社に転職してキャリアを構築する、少しお休みの期間を設ける、家族や知人のサポートを行う、など色々な選択肢があると思いますし、その動機も様々であると思います。決して簡単なことではないですが、ライフステージや考え方に応じて職を選択できると良いですよね。私自身、自分の人生を自分の思う通りに選択する(できる)力を蓄積している方やそれに向かって努力をされている方を素敵だと感じますし尊敬します。
 組織と個人という点では、おそらく多くの皆さんがお感じになっていることと思いますが、同じビジョンや目的を共有できる人と一緒に働くことが理想だと思います。また、色々な方と意見を交わし、考えを教えてもらう機会がたくさんあることも組織で働く利点だと思っています。
 少し話は変わりますが、私のチームの今年の目標はエンプロイーエクスペリエンス(EX:従業員の経験)を高める、です。従業員の皆さんが良い経験を積み周りにも紹介したくなる会社となること、これにより、好循環を生み出すことを目指しています。一方で、矛盾に聞こえるかもしれませんが、従業員の皆さんには自ら考え学んで欲しいとも思っています。自分の人生や仕事に必要なことを考え、学びの場に一歩飛び出す勇気を持つことが出来ると良いと思います。日本のリカレント教育はまだこれからですし、お金をかけて学ぶことが唯一の方法でもありません。自身に必要なことを自ら学ぶ方が増えるといいなと思っています。

―とても成熟した組織と個人の関係性だと思います。お話を伺って、三好さんが自然体で仕事に打ち込む姿に周りの方も影響を受けて、その人なりのキャリアを歩む組織がつくられているのだと感じました。三好さん、本日は素敵なお話をありがとうございました。